経済を守るために
2021 年 1 月 8 日
株式会社ドリームリンク
代表取締役 村上雅彦
緊急事態宣言が再度発令されました。それに伴い GoTo キャンペーンの再開も見送られました。今回の宣言は 1 都 3 県に対して、主な内容はコロナの急所として全飲食店への時短要請となっております。
国や自治体の指示は日々変わっております。これは未曽有の事態下では仕方のない事です。それぞれの立場で刻刻と変わる環境に応じて最善の手を打とうとしているはずです。
しかし、最善の手を打つのは本当に難しい事だと思います。行政に係わる方々のご努力に心より敬意をはらいます。
豪華客船から始まった日本のコロナ禍。感染の元はその後「屋形船」「ライブハウス」となり、「パチンコ店」「理美容室」「エステサロン」「カラオケ店」「デンタルクリニック」「映画館」「病院」「バー」「介護施設」「ホストクラブ」「キャバクラ」「ナイトクラブ」「歌舞伎町」「接待を伴う夜の街」「東京」「寮」「職場」「家庭」と情報が更新されて行きました。そして、今は「全ての飲食店」が急所と言われております。
振り返ってみますとパチンコ店でクラスターは発生しておりません。当時自治体はパチンコ店へ休業要請を行いました。要請に応じない店は店名を公表されたこともありました。そのような混乱の中で倒産した店もあると聞きます。神奈川県の黒岩祐治知事がおっしゃったことが印象的でした。「休業要請に応じない店はなぜ応じてくれないのかと思い、その店へ自ら行ってみた。そしたら、その店は手指消毒をしっかりと行い、客席は 1 席づつ間引きされていた。換気対策もしっかりと行われている。この店と対策を講じていない店を同じ扱いにして良いものかと思った」と。その通りだと思いました。
我々、外食産業は国民を守るために、国や自治体の要請に応じなければなりません。同時にスタッフの雇用も守らなければなりません。今回は時短要請に応じた場合、1 店舗あたり 1 日 6 万円の協力金が支給されます。前回までは 1 事業所あたり支給でした。つまり 1店舗の経営であっても、100 店舗の経営であっても協力金は同額でした。複数店舗を抱えている店の多くは「焼け石に水」でありながら要請に応じていたはずです(強制力や罰則などがない中で応じる日本人は凄い民族だと誇りに思います)。今回はその矛盾が解消されました。しかし、まだ矛盾は残っております。
それは「広さに対する矛盾」「エリアに対する矛盾」「感染対策に対する矛盾」の三つの矛盾です。一つ目の「広さに対する矛盾」です。10 坪の店舗も、100 坪の店舗も同じ扱いをされている矛盾です。大きい店舗は当然家賃が高くなります。雇用しているスタッフの数も違います。設備投資の金額も違います。二つ目の矛盾は「エリアに対する矛盾」です。
1 都 3 県の中には郊外の田んぼの中や山奥にあるいわゆる田舎の店舗もあります。一方、新宿、渋谷、銀座などの都会の店舗もあります。当然家賃は桁が違います。三つ目の矛盾は「感染対策に対する矛盾」です。感染原因の一つとして 挙げられている飛沫が原因だとすると、アクリル板の設置や、換気対策、加湿対策などがしっかりと講じられている店はそのリスクがかなり減るはずです。手指消毒すらしておられない店舗と、費用を投じて感染予防対策を講じている店舗が同じ扱いをされている矛盾です。倒産に追い込まれたパチンコ店の様な店を繰り返し出してはいけません。経済を守るため、雇用を守るためにも矛盾の解消を切望します。
しかし冒頭で申し上げました通り未曽有の事態下では様々な矛盾が起こります。それは仕方のないことだと思います。その矛盾にばかり目を向けていたら「業績が悪いことを人のせい」にしてしまいます。それは「怠慢」です。この環境下でも業績をのばしている経
営者はたくさんおられます。そこに目を向けなければならないと思うのです。コロナは決して悪い事ばかりではありません。コロナという台風が通り過ぎるのを待っているのではなく、この風をチャンスに変える。その様な決意と考えで経済を守っていかなければならないと思うのです。
僭越ながら私どもがコロナで気づいたことを少し記載します。ほんの少しだけでも何かが誰かのヒントとなり、どなたかのお役にたてれば幸甚です。
「収入を増やす」「支出を減らす」
会社を守り、雇用を守る。経済を守るためにはこの 2 点が大切です。ここに特化して記 します。
1、「収入を増やす」
外食が自粛となっている環境下、私たちにとって最も難しい課題です。私たちの外食産業の場合、その方法は「客数を増やす」「客単価を上げる」しかございません。まず私たちが最初に取り組んだことは「可能な限りの感染予防対策」でした。少しでも安全で安心して頂ける環境を作ることから始めました。「感染対策宴会コース」「営業時間の変更」「食事中心メニューの開発」など思いつく事をスピードを持って実行しました。当然「大きなハズレ」もございますが、その場合はスピードを持って方法の改善に取り組みました。「日本一の高さを目指すソフトクリームの開発で話題を集める」「原価率 50%を超えるランチメニューの開発で客数を増やす」「私たちが考える世界一体に良いクッキーの開発で外販を強化する」「産学官による新しい事業への取り組みによる新たな事業の開発」「海外市場をにらんだ商品開発と販路の拡充」など、刻々と変わる環境の中、情報収集に努め、コロナでなければ気づかなかったであろう新たな取り組みに着手しております。
2、「支出を減らす」
様々な経費削減に取り組んでおります。例えば本部経費はスタッフをリストラすることなく 40%削減しました(ここには血の滲むような努力があります)。そのような数ある取り組みの中で「意識改革」についてお話ししたいと思います。
以前は営業していない時間帯の事務作業時は「必要最低限のエリア」の照明をつけて行っておりました。しかし照明スイッチは 1 つ押すとそのエリア一帯の照明がつく、いわゆる集合スイッチとなっております。作業は 1 灯でも出来るのに複数の照明下で行っていたのです。それでも他の必要ないエリアのスイッチを切っているので「節約している」と思っておりました。現在は全ての照明を消し、電気スタンド 1 灯をコンセントへ刺し作業をしております。小さなことかもしれませんが、これはスタッフの意識を変えることに繋がりました。節約の大きな目的は意識改革だと思います。水道光熱費の節約はその努力ほど数値の効果は上がりませんが「なぜスタンド 1 灯で作業をしているのか?」とスタッフが考え始めます。その回答は「経費削減の意義と目的」へ派生し「利益の大切さ」を気づかせてくれます。やがて「コロナ禍でもいらして下さるお客様への感謝」に繋がります。それらは「感謝の気持ちがこもった温かいサービス」「お客様を感染させない安全な環境作りの徹底」などへと変わっていきます。
つまり蛇口からポタポタと垂れ落ちる水滴の無駄を無くすことは数値の効果は小さいですが「スタッフの意識を変える」という大きな意義があります。全国のスタッフが小さな効果のために大きな努力をする。それはやがて組織全体の大きな効果へと変化します。そして全国のスタッフが小さな努力を自分と一緒に行っているという連帯感を生みます。コロナは私たちに意識改革とチームワークをもたらしてくれました。
3、「経費を分類して考える」
尊敬する経営者の方から教えて頂いたことが役にたっております。経費を「投資」「消費」「浪費」の 3 つにわけて考えるようになりました。事業を発展継続させるためには「投資」は必要ですが「その投資は緊急性があるのか?」と考えるようになりました。「必要な投資だが緊急ではない」つまり「今でなくても良い投資」は先延ばしすることにしました。商売をしている以上「消費」は発生します。「本当に必要な消費なのか?」「更に質が良くて安価なものはないのか?」「何か他のものに変えることができないのか?」など今までにもまして深く色々な角度から物事を見るようになりました。例えば先程述べた「電気スタンド 1 灯」への改革はこれにあたります。「浪費」と思う経費は当然ながら全て遮断しております。
4、「将来へ向けて種を蒔く」
コロナは私たちに「欠点」を教えてくれております。以前、私たちにはフランチャイズ事業部がありました。しかし直営の出店を加速させることとなり、フランチャイズの募集を中止しました。コロナは、その判断が正しかったのか否かを考えるきっかけをくれました。
議論の結果、世の中に役に立つフランチャイズを作り、広げて行くことは大きな社会貢献であることに気づきました。私たちが直営主義に変えた理由の一つにフランチャイズ事業で得られる収入は手間の割に少ないということがありました。これは自分らのことを中心に考えた判断であったと思います。フランチャイズ事業は「世の中を幸せにするブランドの構築(本部)」「それをご支持して下さる市場(お客様)」「ブランドをご評価して下さり加盟して下さるパートナー(加盟店)」で成り立ちます。つまり良いフランチャイズは三方良しとなるのです。世の中から指示されるブランドを作り広めて行くことは世界を幸せにします。手間がかかろうとそのブランドを作り、世界へ広め、多くの方々に幸せを感じて頂くことがフランチャイズ事業の一つの使命ではないのかと考えるようになりました。
「世界中を幸せにする」という私たちの経営理念とも合致します。
手前味噌となりますが、ドリームリンクはブランド構築力が高い企業と評価を受けております。そのドリームリンクならではの新たなフランチャイズ事業構築に取り組むきっかけをコロナは与えてくれました。2021 年 3 月をめどに「世の中を幸せにする新しいフランチャイズ事業」をスタートさせたいと思っております。
5、「無駄ではなかった」
私たちは 20 を超えるブランドを所有しております。このやり方は異例と言われております。居酒屋業態は厳しい局面にあります。しかし、お酒をメインとしない業態は業績を落としておりません。その業態を持っていたことが私たちに希望を与えてくれました。過去の私たちのブランド開発の努力は決して無駄ではなかったとコロナは教えてくれております。
最後に
コロナは憎き相手です。しかし共存していかなければならない相手でもあります。睨んでばかりいてもそこから発展は生まれないかもしれません。角度を変えて考えてコロナと向き合うことも、これからは必要なのかもしれません。我が国の経済を守るために皆で協力しながら国民が一体となって未曽有の事態と戦って行こうではありませんか。
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